大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和31(あ)1305 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理 由

弁護人八木下繁一、同糸賀悌治の上告趣意は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主

張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

職権により調査するに、第一審判決が公訴事実の存在を確定していないのに、原

審が何ら事実の取調をすることなく、刑訴四〇〇条但書に基づき、訴訟記録及び第

一審裁判所において、取り調べた証拠だけで、書面審理によつて公訴事実の存在を

確定し有罪の判決を言渡すことの違法であることは当裁判所の判例とするところで

ある(昭和二六年(あ)二四三六号、同三一年七月一八日大法廷判決)。本件にお

いては、原審は、第一審が無罪とした一万円受供与の公訴事実につき、何ら事実の

取調をすることなく、訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみにより、罪となる

べき事実(原審の認定した罪となるべき事実第二(一))を認定し、有罪を言渡し

ているのであつて、原判決はこの点において違法があり、これを破棄しなければ著

しく正義に反するものと認められる。(なお、上告趣意第一点所論のごとく、原判

決が判示第二の受供与の所為につき擬律を欠いていることは、違法であつて破棄を

免れない)。

よつて刑訴四一一条一号、四一三条本文により原判決を破棄し、本件を原審裁判

所に差戻すべきものとし、裁判官斎藤悠輔の反対意見を除くのほか、裁判官全員一

致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官斎藤悠輔の反対意見は次のとおりである。

事後審とは、原則として第一審における訴訟資料で第一審判決の当否を判定する

ものである。されば、事後審たる控訴審は、訴訟記録及び第一審裁判所で取り調べ

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た証拠だけで公訴事実の存在を認定することができるものと認めるときは、そのほ

か何等無用な事実の取調をしなくとも、事件につき有罪判決をなしうること当然で

あつて、これが刑訴四〇〇条但書の法意とするところであることは、前掲大法廷判

決中のわたくしの意見で述べたとおりである。

検察官安平政吉 公判期日に出席

昭和三一年一一月一日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

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